


意外と思われるかもしれませんが、小さな財布であっても使われるパーツは、大きな鞄よりもはるかに多いものとなります。そのため、作業の第一歩は財布を構成するパーツを切り出すことから始まります。革に型紙を合わせて、職人は専用の革包丁を迷いなくスッと引きます。簡単な作業に見えますが、革には繊維に方向性があるため、パーツによって裁断する向きを変えているのです(量産の際には抜き型を作製し、1枚ずつプレスで裁断します)。
切り出したパーツは使用する部位に合わせて、革を薄く削る革漉きと呼ばれる作業が行われます。実はこの革漉きこそ職人の経験と腕がもっとも問われる工程で、革漉き専門の工房もある程難しい作業なのです。例えばヘリを薄くするために段を付けたり、緩やかに斜めに漉いたり、難しい調節を0.1mm単位で行っていきます。これは財布の完成品を見ただけではおそらく気付かない部分ですが、長く使えば使う程、その使い勝手の良さに現われてきます。
革の繊維を見極め、見えない部分をミリ単位で削っていく。日本的な職人の拘りは普段見えない部分にこそ隠されているのです。
